水門メーカーから全国へ

アクアシャッター誕生秘話

自然から命を守る宇根鉄工所の戦い

平成8年、世界遺産に登録された厳島神社を有する宮島。
その景観と安全を昭和63年以来、ゲート(水門)で守り続けてきた技術がある。
そのゲートこそ、宇根鉄工所が製造したステンレス製起伏式防潮扉であり、今も日々、観光地・宮島の安全と景観を守り続けている。
この宇根鉄工所、派手でおしゃれなビジネスとは言い難い。
しかしこの地味で生真面目なものづくりの信念が自然災害から私達を守り続けているのである。
宇根鉄工所工場写真

第1章 宮島をゲート(水門)で守り続けるために

昭和後期、我々は日本三景の一つである宮島の景観と安全を守るプロジェクトに取り組んだ。
国立公園でもある宮島は台風襲来時に高潮被害が発生しやすい広島県沿岸部に位置し、海にせり出した厳島神社とその参道はたびたび台風や高潮による浸水被害を受けていた。
ゲートの設置現場は海と山に挟まれた地形。従来のゲート形式では、扉を開閉するための広いスペースが必要となり、この場所に設置することは不可能だった。
また、厳島神社への参道でもあり、景観保護に配慮する必要もあったことから、我々は、本来は河川内で使う起伏堰を陸上に転用することにした。
鋼製自動起伏堰(上が起立時、下が倒伏時)
[広島県芦田川羽場崎井堰]
すると、課題がすぐに出てきた。
扉が倒伏して道路の一部となれば、扉の上を車両が通行することになる。
その解決のために、まず扉を頑丈にした。
次に頑丈にした扉体を油圧シリンダーで持ち上げ、災害時は堰として起立させるようにした。こうして、ついに昭和63年、我々はゲートを宮島に設置することに成功した。
それが、ステンレス製起伏式防潮扉である。
以後30年、我々が製造したゲートは、いつしか宮島の街の安全と景観を今なお現役で守り続ける宇根鉄工所の代表製品となった。

しかし、ビジネスはそう簡単に成長するものではなく、その後、他の自治体から導入検討の問い合わせが何度かあったが、高コストがネックとなり、結局2号機は生まれなかった。
安全を追求することがコストを押し上げ、実用レベルにはならない―。
宇根鉄工所は大きな壁に突き当たるのである。
宮島ステンレス製起伏式防潮扉(起立時)
[広島県廿日市市宮島町]

第2章 公共事業から浸水対策事業へ― 活躍のフィールドを広げる発想の転換!

平成20年以降、我々を取り巻く環境は目まぐるしく変遷した。
公共工事は大幅に減少した。 自然環境もまた、ゲリラ豪雨などの異常気象により全国各地で浸水被害が頻発する。我々は、次世代の柱となる事業を模索し続けた。
その結果、宮島ゲートをベースとして、建築物の浸水対策向けに水道水圧を動力にした新しいゲート(防水板)を開発することとした。
防水板は、非常時でも確実に機能することが要求された。
そのため、災害時にダウンしやすい電気を使用しないことを製品開発のモットーにかかげた。
油圧式という方法もあったが、それでは電気を必要とするうえに他社との差別化が図れない。
そのとき水道水圧を利用出来ないかと、ひらめいた。
開発中の水道水圧式防水板
ただ当時の我々には、水圧に関する専門知識が全くなかった。
水圧を扱う大学研究室に片っ端から電話をし、訪ね歩いて、やっと解決の糸口を紹介された。
フルードパワー工業会・水圧部会の方々の協力である。
その協力を得ながら、当社は設計部員1名を1年間開発専属にし、試行錯誤の末に製品化した。
展示会にも出展し、多くの来場者からの好評価もいただいた。何基かの納入にも成功した。
しかし我々の予想に反し、その後水道水圧式防水板の売り上げは思うように伸びなかった。
実際の市場ニーズは、いつ起こるかもわからない災害に対し、24時間365日の安全を求めていた。
水道水圧式防水板
[広島県広島市南区]
具体的には全自動化と、メンテナンスフリーが、客先ニーズだった。
再び我々はアイディアを出し合い、検討を重ね、お客様のニーズを満足させる製品を模索した。繰り返し、繰り返し模索し続けた。
その結果、全く別の発想である浮力式にたどりついた。
宇根鉄工所の命を守る技術、その技術の集大成がやっと浮力式という商品として形を成したのだ。
浮力式防水板の漏水試験の様子

第3章 浮力式防水板で販路を大幅に拡大

浮力式防水板の売り出しにあたり、我々は当初、ホームページの作成と展示会出展、DM送付などの方法を取った。
以前、水道水圧式防水板を展示した折に、ただ防水板を持ち込んで動かすだけでは大きな反響を得られなかった経験から、浮力式防水板は、水槽付きの展示機にして、実際の動きと水密性能を重点的に見てもらった。
これが功を奏した。
私たち宇根鉄工所が大切にしてきた「真に役立つ製品コンセプト」について、この演出は誰もが実際の災害から被害を防ぐための本当に必要な機能をリアルに感じて貰えたのだ。
東京ビックサイトで開催された
防災展に出展した際の様子
展示会をきっかけにマンションデベロッパーである大京、三菱地所レジデンスへの納入が決まった。 更には、文化シャッターなど大手販社との提携ができた。
大手の販路を得たことにより、飛躍的に引き合いが増えた。
その後、販売代理店は10社を数え、日本土地建物、野村不動産でも採用が決まった。
最近では、広島市役所本庁舎、関西国際空港など、ランドマークとなる重要施設への採用も増えてきた。今後も、大きな躍進が見込まれている。
浮力式防水板
[広島県広島市中区]

Next Stage: 次代への挑戦 ― 水圧を利用した新商品の開発

水道水圧式防水板という製品では、水道水圧で機械を動かすメリットを十分に発揮することはできなかった。
しかし、水道水圧は我々のすぐ身近にあり、簡単に取り出せる魅力的な動力である。
この水道水圧で物を動かす技術を確立できれば、応用できる市場の裾野は非常に広い。環境負荷が小さく、ランニングコストも低減可能な理想的次世代型エネルギーと言える。
水道水圧の動力としての利用は未だ確立されていない分野だけに、汎用部品が極端に少ないなど乗り越えるべき問題や技術的課題が山積している。
しかし、それだけに達成できたときの社会的貢献性は極めて高い。
水道水圧はエコでローコストな
次世代エネルギーとして注目されている
宇根鉄工所の次なる挑戦は、「災害から命を守る」から「水の力で人を豊かにする」という段階に進み、そのフィールドを拡大していこうとしている。

この地方の中小企業の小さな挑戦に、何かを感じて貰えた人に水の力で人を豊かにする次なる挑戦に一緒に参加して貰えることを願っている。
"水害をなくす仕事" はじめませんか?